SW橋の技術概要
材料の強さには、表1にみられるように、「比強度」という概念がある。「比強度」とは、強度(kgf/cm2 )を比重で割った値で、この値が大きいのは「軽くて強い材料」であり、この値が小さいのは「重くてもろい材料」である。この表1によれば、木材は非常に「軽くて強く」、コンクリートは非常に「重くてもろい」のである。例えば、プロ野球で使っているバットは木製でコンクリート製ではない。 重くてもろいコンクリートで橋を作る場合には、コンクリートの中に大量の鉄筋を埋め込んで補強しなければならない。そこで、軽くて強い木材の中に鉄筋や鋼材を埋め込んで橋を作れば、コンクリート橋よりも軽くて強い優れた橋を作ることができる。この橋をSW橋といい、Steel stiffened Wooden bridgeであり、木材を鋼材で補強したハイブリッド橋である。 表1
SW橋は、図1と図2に示すように、SWスラブ橋とSW桁橋の2形式に分類できる。SWスラブ橋は、図1に示すように、国産の杉やカラマツの間伐材の角材を1層あるいは2層に接着して木スラブ(木床版)を作り、その上下を、鉛直リブ鋼板のついた上鋼板および下鋼板によって、サンドイッチのように挟んで接着した「鋼材で補強した木スラブ橋」である。SW桁橋は、図2に示すように、木材あるいは木集成材で作った木主桁の下フランジ部にリブつき下鋼板を接着挿入し、上フランジ部に縦リブつき鋼床版を接着連結した「鋼材で補強した木桁橋」である。木スラブあるいは木主桁の上下を鋼材で、サンドイッチのように挟んで補強すれば、従来の木材だけの木スラブ橋あるいは木桁橋に比べると、その曲げ剛性が十数倍強くなり、トラックなどの重交通(A活荷重、B活荷重)に対応可能になり、また、床版が鋼床版なので、従来の木橋やコンクリートのPC橋の床版に比べて維持管理費が格段に安くなり、長年月の寿命が期待できる。
SW橋の特徴
1) SW橋には杉などの間伐材を大量に使うので、木材の地場産業に貢献する。 2) コンクリート橋は冷たいが、SW橋はぬくもりがあり、公園などにもよい。 3)SW橋の自重はコンクリート橋の3分の1で軽いので、地震に有利で、下部工費もそれだけ安くなる。 4)SW橋はプレハブ式に設計されているので、品質が良く、製作・運搬・架設が容易で、工程が速く、工費が安い。 5) SW橋の床版は鋼床版なので、耐荷力と耐久性があり、橋面排水性が良く、維持費が安く、長年月の寿命が期待できる。 6)SW橋の床版は鋼床版なので、負の曲げモーメントに強い連続桁形式の橋に適しており、伸縮継目の数が少ないから走行性が良い。 7)SW橋の素材は木材と鋼材であるから、橋を架け替えるとき、リサイクルができる。
SW橋の施工方法
!)SW橋はプレハブ式に設計されており、自重が軽いので、製作・運搬・架 設が容易である。 2)架設にはクレーンを用い、数時間で架設が終わる。 3)鋼床版のデッキプレートは、現場突合せ溶接を行い、溶接部は超音波検査を行う。 4)SW高欄、木製地覆、排水管、伸縮装置、ゴム支承などは、プレハブ式に現場で取り付けられるから、現場施工は速い。 5)鋼部材と木部材との連結には、強力なエポキシ樹脂接着剤を用いるため、連結は確実であり、応力の連達も滑らかである。
各種道路橋の構造特性の比較 SW橋の適用支間長
1)SWスラブ橋の適用支間長は、B活荷重で、20m程度までがよい。 2)SW桁橋の適用支間長は、B活荷重で、単純桁形式で50m程度、連続桁形 式で100m程度、斜張橋形式で200m程度、吊橋形式で300m程度がよい。
SW橋の概算上部工費
コンクリートのPC橋とSW橋の概算上部工費の実績図を、図3に示す。 図3において、支間長20m、総幅員7.2mのSW橋の場合は、(18万円/m2 )x (20m)x(7.2m)=2592万円である。 また、コンクリートのPC橋の場合は、 (21万円/m2 )x(20m)x(7.2m)=3024万円であり、SW橋が17%安い。
SW橋についての実験等実施状況と学会への論文発表
1)渡辺昇他:On Experimental Study of Steel Stiffened Wooden Beams. EASEC-6(第6回東アジア構造工学会議).1998年1月 2)渡辺昇他:鋼補剛木桁(SW桁)の耐荷力について、平成10年度土木学会北海道支部年次技術研究発表会 3)渡辺昇他:鋼補剛木床版(SW床版)の合成桁の実験的研究、平成11年度土木学会北海道支部年次技術研究発表会 4)渡辺昇他:SWスラブ橋の開発的研究、平成13年度土木学会北海道支部年次技術研究発表会 5)渡辺昇他:SWスラブ橋の設計・製作・架設・載荷試験について、平成13年度農業土木学会中国四国支部講演会 6)渡辺昇他:八丁平つなぎ橋の設計・製作・架設について、平成14年度土木学会北海道支部年次技術研究発表会
SW橋活用の効果
比較する従来技術:「コンクリートのPC橋」 1)経済性が向上する。 SW橋の上部工費はコンクリート橋に比べて10%程度安い。 また、SW橋の自重はコンクリート橋の3分の1で軽いので、地震時に下 部工に働く慣性力も3分の1になり、それだけ下部工費も安くなる。 2)工程が短縮する。 SW橋はプレハブ式橋梁で自重が軽いので、工場製作・運搬・現場架設が 速い。 3)品質が向上する。 SW橋はプレハブ式に工場製作するので、品質が良く、検査ができる。 4)安全性が向上する。 SW橋はプレハブ式橋梁なので、工場製作・運搬・現場架設の安全性が高 い。 5)施工性が向上する。 SW橋はプレハブ式橋梁で自重が軽いので、工場製作・運搬・現場架設が 容易である。 6)環境が向上する。 SW橋には人工林のスギやカラマツの間伐材を大量に使うので、人工林の 生育に貢献する。また、SW橋の素材は木材と鋼材であるから、橋を架け 替える場合、リサイクルができる。
SW橋の施工実績
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